「令和6年(2024年)能登半島地震救援ニュース」No.71
—自主避難所から、自立避難所へⅫ(輪島市西保地区上大沢編-2)
4月下旬の訪問から2回目の上大沢集落の訪問で、今回は「やさしや足湯隊」に同行して足湯をさせて頂いた。4月に初めて来たときは、4人ほどしか帰村されていなかった。あれから2ヶ月、今回は区長さんが「足湯があるから・・・」と声をかけてくれたのか、女性4人、男性4人もいた。皆さん喜んで下さったのだが、その背景には「ここにボランティアが来てくれたのは、あんたらが初めてや・・・」ということにあったのかもしれない。
「昼には、みんな畑仕事や田植えの準備から、集会所に戻ってきて昼ご飯を食べるから、その頃に来たら丁度みんないるよ」と区長さんの話だったので、その時間帯に合わせて午後1時に到着した。もちろん、足湯をさせて頂くときは一切の道具をこちらで持って行くのだが、水がまだ出ないにもかかわらず、すでにお湯を沸かして下さっていた。ボランティアがこうして被災地に迷惑をかけることだけはご法度だが、もう沸かしていたので、甘えて、使わせて頂いた。
上大沢は海からの風も強いという集落なので、風除けの“間垣”が景観としても有名なほど観光地としても人気があった。最初に足湯の場所を決めるのに、「どこでしましょうか?できたら部屋の中の方いいのですが‥‥、外だと風がきついのでせっかく足を温めて、冷やすと効果が半減するので・・・・・」と言い終わる前に、「ここの人は、これくらいの風は慣れたもんだよ!」と一蹴された。なるほど、そうだろうなぁと納得した。でも、結局集会所の畳の上で行った。
はじめての足湯なのか、「お!足湯かー!」と大歓迎された。「人に触ってもらうと全然違うな!」「足湯は気持ちいいね」「肩をさすってもらうだけで、何かスーッとしたね」など感想を言ってくれた。足湯をしながらいろいろ話もしてくれました。以下、4人のおばあたちの話を紹介すると。「この4人はみんな、在所から嫁にきた。昔から知ってるから仲はええねぇ」「最近の若い嫁はみんな旅(旅の人)やなぁ」「春のごっつぉ(ご馳走)。ワカメとれりゃワカメだし、山菜取れりゃ山菜がごっつぉ」「水ぶきは、ごま油で炒めるのがうまいね」「ヤマブキは日陰のほそこい(細い)のがいい。日当たりいいと、この赤くなったようなのはコワイ(硬い)」「昔は岩海苔取りをやっていたけど今はやっていない。ここの海苔は美味しいよ」(学生はおみやげに戴いた。)など美味しい山菜の話から、自慢の岩海苔の話や料理の話まで‥‥。3人寄れば○○だけど、4人なので想像がつくでしょう。
こうして足湯をしながら、一見たわいもない話を聞かせて頂いたが、こういう話に「自分の営みがある人は生きる目的がある」と気づかされ、久しぶりに足湯に参加して、「やっぱり足湯は意義があるなぁ」と感心していたベテランボランティアも。そして「(ここまで来るのに)道が大変だったけど、自分たちにとっても、土地から生えているように生きている」とポツリと‥‥。これが自立ではないか!自主から自立への暮らしへと、いままで通りの営みがある。これが「風土」というものではないか!
別れ際に、稲の苗を育てているNさんは、「腕が痺れる。でも今やらなどうするんか!やらなければ、来年からの米作はない。」と厳しい中での覚悟を聞かされた。
4人のおばあは、一人は歩いて、一人はNさんが運転する軽トラの助手席に、残った二人はいつものことのようにそのトラックの荷台に乗って颯爽と集会所を後にされた。
(上大沢編:3に続く)
「やさしや足湯隊(第9次足湯隊)」(清野しずか、大原泰輔、南太賀、村井雅清)
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