「令和6年(2024年)能登半島地震救援ニュース」No.72

「令和6年(2024年)能登半島地震救援ニュース」No.72

輪島の仮設住宅での孤独死に思うⅣ

 先日9日に、本レポートNO,70で紹介したFさん宅を訪ね、2007年の能登半島地震後の仮設住宅での活動を聞かせて頂いた。

 Fさんは、その地震で自宅は全壊。その後50戸のY仮設住宅に入居し、そして災害復興公営住宅でお母さんと二人暮らしをされいた。(母は94歳、4月に白内障の手術をし施設で暮らす。)Fさんも、在宅被災者を診てまわっている訪問医の診断で血糖値が異常に高いということで、4月に即入院され治療を受け、今は自宅での療養となった。「糖尿病」だ。

 さてFさんは仮設住宅に入居された時には、仮設住民のお世話をするN区長さんがおられた。しかし、その区長さんは荷が重いのか藤本さんに代わって欲しいと依頼があり、Fさんが仮設住宅の区長になった。

 当NGOが、能登半島地震の被災者支援としてY仮設にもお邪魔し、救援物資を持って行ったり、足湯ボランティアを派遣してきた。その時に、阪神・淡路大震災での孤独死のことなどを話したようで、Fさんは「それをヒントに仮設住宅での見守り活動を始めた」と語り始めてくれた。 

 この50戸の仮設住宅でFさんは、毎日朝・昼・夜と3回の訪問をされていた。最初は要領が分からなかったが、とにかくドアをノックし、救援物資を配りながら「元気?」「何か困ったことある?」と訪問していた。そのうち被災者の方から「待ってたよ。元気、元気。○○作ったから、持ってけ!」と食べ物を戴いたりする。また「丁度、焼き鳥を焼いていたので食っていけ!」とか、救援物資を届けていたら、代わりに何か貰って帰るという日常になってきた。そのうちに「こうして訪問することが楽しくなった!」と。ある時、仮設住宅に数か所ハチの巣が出来ていた。Fさんは、市役所に電話をし担当者に来て貰ってハチの巣を除去した。またここの仮設住宅に住む高校生が、Fさんの手伝いをするようにもなってきた。

 そのような日々を送っていた時、いつものように被災者を訪問していると、返事がないお家があった。ガラス越しに覗いていたら、台所で住人が倒れていたのが見えた。Fさんは迷うことなく、石を投げてガラスを割り、鍵を開けて中に入った。意識はあったので、すぐ救急車を呼び病院に運んで貰った。診断は熱中症で3時間ほど病院にいて帰宅した。

 結局、大事に至らなかったのは幸いだが、やはりケースによっては命取りにもなるということではないか。Fさんは健康相談も開いていて、慢性病の方の病状や常備薬の名前を聞き、代わりに病院に行って薬を貰ってきて各々に届けても来た。毎日3回も訪問していたら、各家庭の事情も分かってくる。

 本レポートNO 68でも書いたが、亡くなられた梁勝則(リャン・スン・チ)医師が言われた「孤独死が問題ではなく、生の孤立が課題なんだ」ということをそのまま実証されているのがFさんではないか?先般の孤独死を受けて、石川県知事は「支援の強化!」を打ち出したが、具体的には、第二のFさん、第三のFさんを何人も輩出することなのだ。

 30年前の阪神・淡路大震災で、5年間の仮設住宅で255名の孤独死を出してしまった。この経験が、その後の支援事業に活かされ続けてきたことを、石川県はじめ各被災自治体、そして各専門家も含めて支援者となるすべての人は、忘れないで欲しい!!   

                                             (被災地NGO恊働センター 顧問 村井雅清)

*私たちの活動は、日本財団「災害発生前後の初動期に関する支援活動」助成を頂き活動しています。

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*私たちの活動は赤い羽根共同募金会「ボラサポ・令和6年能登半島地震」の助成を頂き活動しています。

引き続き現地からの情報を発信していきます。
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