熊本地震救援ニュース 第50報

<災害時におけるボランティア事情-30>

 先日ある勉強会で、参加者の一人が「公的ボランティア」と「一般ボランティア」という表現を使っていたので、災害時になんらかの形でボランティアセンターにつながって活動する人たちは、自らを「公的」という意識をしているわけではなくても、行政や社会福祉協議会に認知を受けて運営しているボランティアセンターに登録して活動するという意味で「公的」と云われる由縁であろうかと考えた。では、公的でない「一般ボランティア」とはどういうボランティアのことなのか?敢えて、公的と対比して使われたので「非公的」という意味合いだろうと思う。つまり、ボランティアセンターに登録せずに、被災地の中の知人や友人を通して勝手に活動する、あるいは直接被災者から要望を聞いて活動するというボランティアのことを「一般(非公的)ボランティア」というとすると、この非公的ボランティアは被災者の役に立っていないだろうか?という疑問がわく。

  阪神・淡路大震災の時、神戸市内にはボランティアセンターは二つしかなかったので、7割近く占めていた初心者ボランティア(=ほとんど非公的ボランティア)は、支援の届かない人や地域に対して寄り添い、活動をしていた。つまり支援の届かない「隙間」にこだわったともいえる。ということは、あまねく平等を原則とする行政の隙間、あるいは「公的災害ボランティアセンター」が見落とすような隙間から聞こえてくる被災者(被災地)の声は、場合によっては見落としてはならない声ではないかと断言できる。東日本大震災でも課題となり、改正災害対策基本法にもつながった「甚大な被災地だからこそ、そこからは声が上げられない。また上げても声が届かない。」という深刻な課題に対して、むしろ柔軟で、自由の効くボランティアの方は寄り添いが可能かも知れない。

  冒頭の勉強会に参加しておられた名古屋のボランティアは、「応急危険度判定で赤紙(危険)、黄紙(要注意)の被災者の要望に応じようとするならば、実質ボランティアセンターに登録せずに活動しなければできない。もちろん自己責任で活動をしていますが、ボランティアセンターを通すと赤紙、黄紙の被災家屋には入れないから。」と言っていた。こういう活動の場合は確かにボランティアセンターでは二次災害の心配があるため、引き受けられないというのが現実である。

 熊本地震発生からまもなく2ヶ月になるが、本格的修理の目処がたたず、雨漏り防止のブルーシートを掛けている被災者は多い。被災者からは本格的な梅雨入りになることから、「そろそろシートの張り替え」と心配する声も出ている。しかし、ボランティアは屋根の上には上がれない。こうして危険家屋での瓦礫片付けや屋根へのシートがけなど、「公的ボランティア支援センター」からはボランティア派遣はできないケースが多いだろう。こういう場合、大工さんや建築士さんがついて行えばボランティアもできる領域が増えるのは間違いない。今回の熊本地震では、被害家屋の多いことからまず「住まい」再建や補修に関連する作業が多い。今後のためにも公的ボランティア、あるいは一般ボランティア問わず、専門家との連携で被災者のお役にたてるような仕組みづくりが急がれる。
                                                                               (村井雅清)

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熊本地震救援ニュース 第49報

<災害時におけるボランティア事情-29>
 先日、「44人屋根から転落」「熊本地震 修理依頼も「1年待ち」」(毎日新聞、2016・6・7)という記事が目に入った。記事によると「熊本地震で被災した自宅の修理中に、屋根などから転落する事故が相次いでいる。需要が急増し、業者に修理を依頼しても「1年待ち」の状態。住民が自ら作業するケースが増えており、被害に拡大が懸念される。」
また「シートで雨漏りを防いでいるが「風雨ではがれるたびに夫が屋根に上り、直している。けがをしないか心配だ」(同紙)という内容。

 今回の熊本地震後の被災者の話で共通するのは、最初の震度7ではまだ建物はかろうじて倒れていなかった。しかし、2度目の震度7で「グシャ!」と壊れたという話です。
 私は連休中に少し高台から被災家屋の状況を見たときに、とにかくブルーシートが目につき、「これから雨が降ると大変なことになるだろうなぁ・・・」と心配した。そもそも危険が伴うので、ボランティアに依頼できないために圧倒的に人手が足りないことは容易に想像がついた。しかも、もっと気になったのは、ブルーシートがかかっていない家屋は被害がないからシートがかかっていないのではなく、屋根の上にあがってシートがけができる人がいないからだろう。例えば高齢者のみの家屋は被害があってもかけられない。そういう被害家屋は、この間約2ヶ月の間雨が降ったときには容赦なく雨漏りがしたのだ。

 私の友人の場合は、シートをかけているものの、対処が遅かったのか約1ヵ月半で和室の天井はカビだらけ、畳にはきのこが生えていたというウソのような話。これでは、例え建物本体の損傷が軽微でも実際にはこのままで生活はできない。この知人は、「全壊」認定なのでとりあえずは仮設住宅での生活ができるが、もし被害認定が「一部損壊」であっても天井や壁がカビだらけ、畳の下の土台は腐りはじめたという場合であればどうなるのだろうかと心配する。しかも雨漏りにより水が浸透し、半年ほどしてから「壁が落ちる」とか、「カビだらけで健康上住めない」とか、「柱はシロアリの巣になってしまい危険度が増す」とか、とにかく被害判定とは関係なく、「人が人らしく、最低限の生活ができる状態でなくなるだろう」ということが予測され、深刻な課題である。もう遅いのかもしれないが、だからこそ今、しかるべき手が打てないのかと考えたくなる。

 この救援ニュース第43号、47号で紹介した専門家による「大工ボランティア」と「一般ボランティア」がセットになれば、ブルーシートがけの張り替えをし、一応雨漏りを防ぐ程度の処置はできるだろう。冒頭の新聞記事に戻ると、屋根の修理を依頼しても「1年待ち」ということはまだ向こう1年は雨漏りを防げないということなのか?これでは被災者は踏んだり蹴ったりだ。せめて素人のボランティアに簡易の講習を受けてもらい、専門家をつけて屋根のシートがけをきちんと対応するというしくみを制度化できないものかと節に訴えたい。
                (村井雅清)

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熊本地震救援ニュース 第48報

<災害時におけるボランティア事情-28>
 今、朝日新聞に毎日「てんでんこ 熊本避難ルポ」という特集記事が出ています。熊本地震後の被災地における避難の状況を伝えています。昨日、今日は熊本市内のある小学校避難所のルポです。学校側としても、これまでも避難所訓練はされてきたようです。しかし、いざ現実になると予想以上の困難が待ち受けています。困難にぶつかった学校関係者が訓練を振りかって「実践的でない『イベント』だったなあ」と言っておられます。しかし、そうした中でも校長先生以下、教員たちが力をあわせて運営にあたり、なんとか難局を乗り越えられたようです。最初は、校長の方針に疑問を感じる教員もいたようですが、一人の教員が「みんなでやりましょう!」という発言をされ、一応前に進みだしたとのことです。
 この事例から私たちが学ばなければならないことは、いわゆる訓練のための訓練になってはいけないということです。いかに実践的な訓練をしておかなければならないかということにつきます。しかし、今回の場合は二度も震度7の揺れが襲うということは予想外と言えるでしょう。もう一つは、運営にあたって一応みんなで合意形成を図るということが大事です。学校避難所の場合、施設の管理責任者は校長か、教育委員会になるケースが多いですが、運営に関しては地域の住民リーダーを中心にと明記されている地域防災計画が少なくありません。この学校もそのようになっていたのですが、「マニュアルでは、緊急の場合は地域リーダーとして避難所を開設するはずの地元自治会役員が姿を見せなかった」ということらしい。いくらマニュアルでそうなっていても、ご自分の家が被害にあっていると、やはりそちらを優先するでしょう。これは想定内です。

 ところで実践に役に立つ訓練と言っても、実際にはなかなか判らないことが多すぎるだろうと思われます。最も役立つのは、平時から他の地域(場合によっは他県)の災害時にボランティアに行って実際に見ておくことが必須だと思います。机上の訓練では限界があるでしょう。そこで、名古屋市天白区の取り組みを紹介しておきます。是非参考にしてください。私が避難所運営ワークショップの講師として数年続きで関わっていた名古屋市天白区は地域の住民リーダが避難所責任者となり、その方に地区の代表者や区行政がサポートすることになっており、この10年間くらい毎年、この住民リーダーを育てるための研修をしてこられました。目的は、誰がリーダーになってもできるようにということです。1学区から毎年3名の研修生が来られます。つまり10年間で30名のリーダー資格者が生まれるということです。これくらい徹底していると、誰がリーダーになってもなんとかやっていけるでしょう。おそらく、ここまでやっているのは全国でもこの天白区くらいではないでしょうか?行政や社会福祉協議会、地域のNPOも積極的に応援しています。
 地域の中からこれだけの担い手が生まれると合意形成も難しくないだろうと想像できます。それはお互いが、避難所運営リーダーになれば大変だろうなぁと分かっているからです。合意形成をスムーズに持っていくには、徹底して話し合うことです。時間がなければ、「とりあえずこうしましょう!上手くいかなければ元に戻ってまた話し合えばいい!」というくらいに構えていれば、できるものです。日本の場合、物事を単純に多数決で決めてきたので、時間をかけての合意形成には馴れていません。でも、やってみれば案外簡単にできるものです。是非一度平時において、実験して見てください。(村井雅清)

*出し惜しみをする訳ではないのですが、長崎便・佐賀便のボランティア・バスのご案内は、あと一両日待ってください!!

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熊本地震救援ニュース 第47報

<災害時におけるボランティア事情-27>

●<現場スタッフにより6月3日レポートです。>
 第43報でもお伝えした救出作戦の結果です。納屋は跡形もなくなりましたが、トラクターは無事に救出されました。これも炎天下のなか、地道に活動をしてくれた“棟梁”を初めボランティアのみなさんのお陰です。被災者の方もとても喜んでおられました。
救出1_s
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 また、崩れかけた納屋を復旧する作業も行っていました。被害家屋をすべて解体するのではなく、復旧できるものは復旧していくというのは被災者の方にとっても経済的負担も軽減され、時間をおいてゆっくり考えることができるので、とてもありがたいことです。
納屋_s
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そして赤紙の判定をもらったところの被災家屋に入りました。これは避難所で足湯をしている時に、「うちはもう赤紙じゃから入れん。仏壇だけは息子と出したけど、地震からあとは何もしとらせん。どうしようもなか」というつぶやきがきっかけです。
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そこで、稲見さん(震災建築被災度区分判定・復旧技術者)に現場を見てもらったところ、「これまでの余震で倒壊していないし、補強をすればボランティアさんも片付けに入れる」という判断をしてもらいました。いざという時の避難路も確保しながらボランティアが安全に作業し、被災者の想いに寄り添いながら、連日の活動が続きます。その言葉を聞いた被災者の方は「昨日も2~3時間しか寝てないけれど、これで先が見えてきた。ボランティアさんが神さんに見える」と笑顔がこぼれました。被災者にとっては、あの地震で時間が止まっていたのが、動き出したような瞬間でした。
復旧3_s
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 余計なお世話かもしれませんが、こうして専門家がついていれば、ボランティアが手伝うことによって、こんなこともできるという証明です。災害救助法の趣旨に基づけば、「被災地の自治体・首長においては,自ら能動的に,必要な物品を購入し,必要な人材の雇い入れ・協力依頼・従事命令を行い,必要なあらゆる手立てを講じることによって,救助を実施する責務があり,その権限が付与されています。」となり、具体的には災害救助法を徹底活用すれば、全国から建築士を集め、必要な人材として県が雇えば、専門家に工賃も払うことができ、大工さんたちの仕事も創出できるというものです。これだけ災害を繰り返すこの国なのに、どうして行政担当職員は対処しないのか?首を傾げたくなります。
 
すでに被災地は梅雨入りしました。梅雨の晴れ間は、家の片付けや農作業に追われます。一人でも多くのボランティアが西原村などの被災地に訪れてくれることを願っています。

●いよいよボランティア・バス佐賀便、長崎便の準備ができました。GW明けからボラバスの資金をと呼びかけ、たくさんの方々からご支援を頂きました。みなさん、ほんとにありがとうごさいます。「おたがいさま」がこうして生きているんだ!と思うと、感激です。阪神・淡路大震災でも、東日本大震災でもそうでした。こうして「暮らしやすい」「深呼吸のできる」社会が成立するのだと実感しています。感謝!!

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熊本地震救援ニュース 第46報

<災害時におけるボランティア事情-26>

 前号でもお伝えしましたが、高野山真言宗総本山金剛峯寺社会人権局のご協力で、西原村で僧侶による足湯活動が活発に行われています。21年前の阪神・淡路大震災で初めて避難所で足湯が行われ、その後新潟地震(2004)、能登半島(2007)を初め、以来被災地で続き、東日本大震災や広島土砂災害、茨城県常総市などで足湯が続けられてきました。
 鬼怒川の氾濫で甚大な水害となって茨城県常総市では、被災者自身が足湯を覚え同じ被災者にしてあげるという理想的な光景も生まれました。先日のこの「熊本地震救援ニュース」でも紹介しましたように、西原村の被災地でも、近隣の菊池市の高校生が西原村の被災者のために足湯ボランティアを同高校内でも広げようと取り組んでいます。

前号でも紹介しましたが、「お坊さんに足湯をしてもらうなんてもったいない!」という被災者の声がありますが、お坊さんは別格としても、被災者の誰もが「孫のような学生さんに、こんなことをして貰って」と涙ながらに感謝をされる被災者も少なくありません。
 お水が手に入り、お湯さえ確保できれば足湯ボランティア活動というのは、誰でもできます。そして、心身の疲労が溜まっている被災者にとって「足湯」は、ボランティアからの最高のプレゼントです。足湯はストレスの軽減に相当貢献しているだろうと思われます。

 さて、6月4日、大学コンソーシアムひょうご神戸主催の「学生ボランティア養成プログラム」に講師としてお声がかかり、「KOBE足湯隊」の学生メンバーとともに足湯の研修をして来ました。複数の大学や若干の留学生が参加していました。その中で、ある大学の先生から「なんとすばらしいボランティア活動でしょう!」とお褒めを頂きました。その先生曰く、「これは被災地で被災者にしてあげるのもいいでしょうが、地域で中学生や高校生に普及させて、平時から地域の高齢者施設などでしてあげればどれだけ喜ばれるでしょう!」と感心されたのです。
 全くその通りです。平時から全国の中学、高校、大学、および専門学校などで足湯を覚えておけば、いつでも地域に貢献できます。そして、各々が被災地の地域の近隣に所在していれば、すぐにでも足湯を提供することができます。被災者にとっては、ご自分が住まわれる地域の子どもたちが足湯をしてくれるとなると、どんなに嬉しいことでしょう。

 足湯はこれほど簡単で、かつ想像以上に被災者ケアに役立つのです。

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熊本地震救援ニュース 第45報

<災害時におけるボランティア事情-25>

 今日は、熊本地震発災以来ご支援を頂いている高野山真言宗総本山金剛峯寺社会人権局の呼び掛けにより、福岡教区のみなさんが参加者を募り西原村災害ボランティアセンターを通して、足湯活動やガレキの撤去、家屋の掃除などの活動に参加してくれました。(以下6月2日の現地レポート)
 この日は、村内にある2カ所の避難所で足湯を行いました。被災者の方は、「お坊さんにしてもらえるなんて、ありがいたい」ととても喜んでくれました。
足湯2_s
足湯1_s

そして、足湯をしていると「家は赤紙で入れんし、何もしとらん」という方がいたので、急きょ現場を確認に行きました。家の中の畳はすでに雨漏りでびしょ濡れで、あちこちにカビが生え、タンスが倒れ、あらゆるものが散乱し、地震の力のすさまじさを実感します。仏壇以外はほぼ手つかずの状態で、被災者の方はポツリと「家にかえってくると悲しくなる」と一言こぼされていました。
そして、そのお隣のお宅では同じ避難所生活をしている住民の方が自分たちで荷物を出すなど片づけをしていました。部屋の中を見せてくれたのですが、仏壇はあるもののお位牌が床に落ちていました。同行してくれた僧侶の方が、宗派は違いますが、「お参りさせて頂いてよろしいですか」と了解を得て、お参りをさせて頂きました。僧侶の方が「仏さまはどういう状況でも怒りませんよ。安心してください。心の中で祈っていれば大丈夫だから」と話してくれました。震災により何もかも壊されてしまいましたが、心だけは壊されずにしっかり気持ちを持ち続けられることができれば何よりかもしれません。
お位牌_s
お参り_s

 僧侶の方が足湯をして拾ったつぶやきを紹介します。「ずっと農業をしてきた。今、豚を飼っているが、地震で大変だった豚に被害はなかったのがよかった。今みんな草取りやニンニクの収穫の時期で朝早くから出掛けている。」(80歳代女性)。西原村では畜産をしている方、唐芋やニンニク、ピーナッツなどの農業に携わっている方が多くいます。

 午後からは福祉避難所で足湯を行いました。みなさん常連さんで足湯を楽しみ待っておられます。そして、まけないぞうもプレゼントさせてもらったら、「かわいい!!」と早速、押し車に飾ってくれました。
まけないぞう_s

また、私は石鹸フラワーを作っているのよと石鹸をポットに入れてお花を生けた素敵なフラワーポットを見せてくれました。まけないぞうも一緒に記念撮影をしました。
フラワーポット_s
足湯3_s
足湯4_s

そして、避難所では西原村で被災した「俵山コーヒー焙煎所」の方がコーヒーを無償提供しています。また、全国のコーヒー店からもお茶菓子などを含めたご支援を頂いているそうです。不自由な避難生活に一杯のコーヒーは被災者の方にくつろぎと笑顔を運んでくれています。被災地では被災された方が自ら地元のために動いている方々がたくさんいらっしゃいます。地域での支え合いが息づいていることを、そこかしこに感じています。そして村の人たちから「西原村に来てくれたみなさんに感謝しています。」という言葉を頂いています。
コーヒー1_s
コーヒー2_s

なお、高野山真言宗のみなさんは、今後も被災地支援のために、寺院の復興を軸に当センターとも連携しながら活動を続けて下さいます。6月は福岡青年教師会の方々が週に2~3回程度、数名単位で西原村などで活動を行う予定です。2007年の能登半島地震で「高野山足湯隊」が結成されたのですが、こうしてその趣旨がしっかり引き継がれ、熊本でも活躍しておられるのが嬉しいですね!!

●みなさまからの多大なご支援、ご協力がこうして被災地で生かされ、つながりが広がり、多くの発見や学びを頂いていることに心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。引き続きご支援をお願い致します。

熊本地震救援ニュース 第44報

<災害時におけるボランティア事情-24(案)>
●ニュース第31報および第34報(HP,FBのみ毎日新聞記事付き)で紹介させていただきました「寺本わかばちゃん」(西原村出身、神戸大学)が、日々地元の被災者との交流をコツコツと続けています。わかばちゃんにとっては、被災者と支援者ではなく、「あなたとわたし」という関係だそうです。
 「まちづくりは人づくり」という表現がありますが、わかばちゃんの周りには、人が勝手につながっていきます。もちろん、わかばちゃんには人づくりをしている感覚はありませんバイ!

<そのわかばちゃんからのレポートです。>
6月1日に頼政代表とわかばちゃんと一緒に葛目集落の方と梅摘みをした時の話です。。
わかばちゃんが足繁く通っていく中で、住民の方からお声がかかりました。なかなかこうした日常が取り戻せないという被災者が多いです。被災後の暮らしの再建ってこういうことですね!わかばちゃん、ありがとう!
(以下、わかばちゃんの感想です。)
——————-
「今日梅ば摘むけん、よかったら来なっせ~」
集落で出会って仲良くなったおばあちゃんから、今朝嬉しそうな声で電話がかかってきました!人生初の梅摘み!
おじいちゃんおばあちゃんとおしゃべりしながら楽しい時間を過ごしました。
ボランティア対被災者の関係より、「あなたとわたし」という関係を築いていきたい。対個人としてできること、やりたいことをやりたいと思うようになりました。そういう存在が拠り所になるのかなと思います。
「あたが加勢しにくるって知っとったけん、今年はいつもよりたくさんなったとばいな」
そんな言葉がとても嬉しかったです!
今日摘んた梅はおばあちゃんと一緒に梅干しにします!
楽しみだな~(^O^)
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熊本地震救援ニュース 第43報

<災害時におけるボランティア事情-23>
<大工ボランティアの1日(5月30日レポート)>
 当センターのボランティアさんが現場で汗を流しながら活動しています。三木市にある稲見建設代表の稲見充典さんは、2級建築士であり大工、そして、被災度区分判定技術者でもあります。ここ西原村では、多くの家屋や納屋が倒壊しています。そこで、大工さんなどの資格がある方の指導のもと、倒壊した納屋などからトラクターや耕運機や車を救出しています。現場では“棟梁”と呼ばれボランティアさんともわきあいあいと活動をしています。ボランティアさんの中にも、植木屋さん、設備屋さん、司書、僧侶、動物病院などなど多くの技術を持った人たちが被災地に駆けつけています。いわゆる専門家ボランティアです。
 稲見さんのチームにもそんな方たちが参加しながら、トラクターなどの救出大作戦を行っています。そのメンバーの中には、阪神・淡路大震災当時に一緒にボランティアをしていた“一番さん”(西原村通称)が活躍しています。
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救出大作戦 (3)_s
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 丁寧に一枚一枚瓦を剥いで、それをボランティアさんが運び、出てきた木枠を細かく切り出し、それをトラックへ積み込み、「ゴミ」処理場へ運んでいきます。炎天下の地道な作業が続きます。
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 いくつもの被災地で活動しているベテランさんのボランティアさんに「ゴミ」処理場に連れて行ってもらいました。そこには、たくさんの「がれき」が運び込まれていました。木材、土瓦、コンクリート瓦、アスファルト、ガラス、鉄くずなど被災現場で細かく分類され持ち込まれます。
ガレキ (2)_s
ガレキ (3)_s
ガレキ (4)_s

ベテランのボランティアさんは、「発災直後は瓦やブロック塀、アスファルトなどそして木材や生活用品など時間を追うごとに処理場に集まってくるものが違う」と話してくれました。「だんだんと運び込まれるものも少なくなりつつあるのは、あとは解体を待っているのだろう」と、「ゴミ」処理場からも被災地の現状が見えてくることを教えてくれました。
そこには多くの思いでの詰まったものがあり、その背景を考えると胸が押しつぶされそうになります。一番さんが家屋の片付けの現場を続けていて「もう、思い出を捨てるのは辛い」とつぶやいていました。「ゴミ」や「ガレキ」ではなく、思い出や財産なのです。
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 使い終わった車や資器材は、きれいに洗浄されて、翌日の活動に備えています。ボランティアのみなさん毎日本当にお疲れさまです。

◎21年前の阪神・淡路大震災後も、多彩な専門家の方々が支援に来られましたが、専門家がボランティアをされる場合の共通点があるように思います。それは、専門家というのは縦割りが当り前のようなところがあるのですが、ボランティアにくると自分の専門外の分野に細かな配慮ができるということです。視点を変えると、だからこそ専門家と言えるのかなぁとも思います。敢えて一般ボランティアと専門家ボランティアと分けて見ると、一般ボランティアと言えども“プロの素人”と言われるほどのボランティアの鏡のような方もおられます。

◎「走れ ボランティアバス」佐賀便、長崎便の企画が進みつつあります。引き続きご支援をお願い致します。お手数ですが、ご寄付は下記の郵便振替口座で、「通信欄」に「ボラ・バス」と記入ください。
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熊本地震救援ニュース 第42報

<災害時におけるボランティア事情-22>
 先日から朝日新聞の「てんでんこ」というコーナーで、被災地熊本のルポが紹介されています。この記事を書かれている佐々木亮さんというベテラン記者は、実は21年前は阪神・淡路大震災の時には神戸の大学で勉強していた方で、当NGOが事務局を担っていた「市民とNGOの「防災」国際フォーラム実行委員会」のメンバーの一人で、同フォーラムの運営はもちろん、『市民がつくる復興計画』『第1回市民とNGOの「防災」国際フォーラム報告書』作成など、大活躍された方です。特に、同報告書の最後の「ドキュメント・神戸宣言ができるまで」の3頁を担当してくださいました。
 前置きが長くなりましたが、この今朝の「てんでんこ-熊本避難ルポ3 経験」に牧師の奥田知志さんの言葉が紹介されています。それは、「地元が活動主体となることが重要だ」という言葉です。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12386479.html

21年前当NGOは、「阪神大震災地元NGO救援連絡会議」の分科会の一つとして生まれたのですが、この阪神大震災地元NGO救援連絡会議」を震災の二日後に立ち上げたのは、草地賢一という牧師です。残念ながら2000年に他界されましたが、草地牧師と奥田牧師は旧知の仲であったとのことで、私もびっくりしました。
 先述したフォーラムの魂には、草地牧師が貫いていた地元主体や主権在民、被災者主体というキーワードが根底に流れていたのですが、見事に21年目に発生した熊本地震で、沸々と蘇えったようです。
 この救援ニュースでもよく、被災地各地における被災者同士の助け合いや大学生の自主的な活動などを紹介してきました。つまり、これは阪神・淡路大震災後の被災者によるボランタリーな動きの再現です。そういう意味では、私たちのような被災地外のボランティアは、徹底した「黒子」になることが求められているような気がしています。これからの課題は、黒子としての後方支援とは何かということではないだろうか?と思う次第です。(村井雅清)

◎「走れ ボランティアバス」佐賀便、長崎便の企画が進みつつあります。ただ、天気との睨み合いが大変で、「雨天のため活動中止!」とならないように工夫が不可欠です。引き続きご支援をお願い致します。
  お手数ですが、ご寄付は下記の郵便振替口座で振り込んでください。「通信欄」に「ボラ・バス」と記入ください。
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