熊本地震救援ニュース 第79報

西原村より、玄界島視察ツアーを終えて

 台風18号がどうにか過ぎた10月7日、西原村の古閑地区、大切畑地区の方々、そして西原村役場の方々と総勢20名で11年前の2005年3月に発生した、福岡県西方沖地震の被災地である玄界島に訪問し、復興の様子についての視察ツアーを行いました。
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 このきっかけは、古閑地区において、新潟から長岡造形大学の澤田先生や、兵庫県立大学の宮本先生も参加した、7月初旬に開催された座談会に端を発します。この座談会の中で、古閑地区のある住民の方から「他の地域、玄界島での復興がどのように行われたのか、実際に見てみたい」という声から実現することとなりました。

 天候も曇りの中、玄界島の港では現福岡市漁業協同組合玄界島支所・運営委員会会長である細江四男美さんが待ち受けてくださり、私たちを集会所へと案内してくださいました。その後は玄界島の復興の様子をまとめたビデオと、合わせて西原の方々からの質疑応答という形で話が進みました。
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 玄界島人口約700人、住民の大半は漁業で生計の島が地震によって道路、擁壁の被害、住宅のほとんどが被害を受け、ほとんどの島民が福岡市内に避難されました。仮設住宅は半分を島内に、半分を福岡市街側の漁業施設の近くに建設され、島側には漁業関係者、学校に通う人は福岡市街側へ。そのため、家族でバラバラになる世帯もあったそうです。
 復興に向けた体制作りとして、玄海島復興対策会議、その下部組織としての復興委員会など設置されました。島民総会は2005年5月21日を境に勢いを持ち、神戸への視察や、意向調査も行うなどの中で、「玄界島復興だより」を出したり、ワークショップ、座談会を開催しました。2006年1月の第5回島民総会で新しい島作り案を提示、承認を得たとのは地震からわずか10ヶ月のことでした。
 復興計画では、斜面地に戸建、平地に市営住宅とし、海沿いは住宅ではなく集会場などの公共的な利用を。斜面には、車が通れる道も作られました。2007年3月、県営住宅への入居開始。2008年3月、概ね住宅復興完了という流れのご説明をいただきました。

 このような流れの中、どのように再建をしてきたのか、特にどのように合意形成をしてきたのか、ということが西原の方々からの質問として上がっておりました。島という独自の風土の中で、お互いが助け合って生活を積み重ねてきた、そうした中でできた文化を基に、復興の計画が作られていたように感じます。

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 今回は、佐賀大学の後藤隆太郎先生にもご同行いただきました。後藤先生からは今回の視察についてのアドバイスをいただいた経緯もあり、今回現地の案内などもしていただきました。
 今回の視察では、参加された古閑地区、大切畑地区の皆さんそれぞれ「勉強になった」「良い機会になった」という感想をいただきました。玄界島の復興がそのまま西原での復興に当てはまる、ということではなく、むしろプロセスの中で何を重要視してきたのか、そのことが再認識されたこと、また一度西原から離れて他の地域での取り組みを見ながら改めて自分の地域を見直す、良い機会になったのではないかと思います。
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 西原村から視察に来たあるお母さんが仰った。「ここだと夫婦喧嘩も大変だと思う。喧嘩して外に出ても船が出てしまったら行くところがない。山に上がって叫ぶくらい?」
 この言葉から島の暮らしを想像するに、この島ならではの「我慢」「納得」「譲り合い」が存在するのかもしれない、ということです。

 一方、お母さん曰く、西原村では喧嘩をしたら俵山に行って、ひとしきり泣いてから、涙を拭って家に帰ったり、時には実家に帰って、一時してからまた家に帰ったり。
 暮らしの有り様は違うけれども、今回の視察で暮らしを慮るお母さんのその感性に驚かされ、また続けて「やっぱり私は西原がいいわ」と言われた、その言葉を聞いた時に、離れてみて自分の住む地域への思いが湧き上がってきたのかもしれない、と感じました。

 こうして玄界島を訪れてみて、道行く西原の方々に声を掛けられた島民の方と話し込む姿があちらこちらで見られ、それぞれが交流をされていましたが、玄界島の方々が口々に仰っていたのが、「とにかく話し合うこと。納得すること」というフレーズです。

 どれだけ意思疎通ができるのか、そのことがこれから復興の道のりを歩む上で地域にとって大きな鍵になっていることは間違いないと感じました。
 また同様に、西原の皆さんもそれを感じながら、これからの復興の取り組みに励んでいきたい、そんな声もいただきました。(鈴木隆太)

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