熊本地震救援ニュース 第89報

4月に入り猛烈な暴風に見舞われている、西原村。

地震後から時折聞かせてもらっていた、阿蘇の外輪山の一つ、俵山から吹き下ろされる季節風「マツボリ風(かぜ)」である。

あまりの強風なので、地域を回ってみると、全壊して取り壊された後に建てられた運動会に使われるようなテントを物置小屋代わりに使われているお宅が多数あるが、幾つかがすでに吹き飛ばされ、あるいは風圧によって骨組みが折れてしまっているテントも幾つかあった。

西原村の風当(かざて)地区。「この風が一番当たるから、風当なんだよ」と地区の方。

他の地区に比べて、確かに特に風がひどく感じる。

「周りに地震で家もなくなって、木も少なくなったからか、今年は特に風がひどく感じる」

「とにかくこの風がおさまらないと、どうしようもない。地震の後はなんだかいろんなことが起きる気がする。」

 

これからの作付けのために畑に張られたマルチが風で飛ばされたり、屋根のブルーシートがめくれ上がっていたり。ゴーゴーとうねる風の音、揺らされる電柱や信号機、これ以上何も起こらないことを願うばかりである。

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▲テントが飛ばされて修理も大変

そんな中、夜、布田地区の公民館において、地震の後の断層の状態がどうなのか、特に布田地区、小森地区、畑地区、風当地区に隣接する「大峯山」の中の断層の状態、亀裂なども含めて今後の余震などによる影響、また6月に迎える梅雨の時期の影響などについて、熊本大学や防災科学技術研究所の専門家の方々からの実際に実地調査をされての今の現状について、住民の方々への説明や意見交換を行う研修会が布田地区の地域再生委員会の主催で開かれた。

 

今後、昨年のような規模の地震が発生する確率が少ないこと、だが今後の大雨による影響で土砂崩れなどが発生する可能性を孕んでいるところも少なからずあること、特に人家に被害が及ぼされるところはそれほど多くないが、ただいざという時のための備えや避難ということを充分に準備しておくことなどが話された後、住民の方々からの質問など意見交換が熱心に行なわれた。

やはり気になるのは、ご自身の自宅への影響がどうなのか、またこれから住宅再建をしたとして、そこは安全なのか、そのことがやはり気がかりで、そうした具体的な「◯◯地区のここは大丈夫か?」や「安心がないと元の地域に戻ることはできない。もし予測があるのであれば教えて欲しい。今後の地震の可能性と崩落の可能性の有無について教えて欲しい。」という質問などもやりとりされた。

 

地震後に片付けのお手伝いをした、久々に再会したお母さんは、「さっきの話の中には自分の宅地のところの断層がどうかということはなかったけれど、実際はこれからの再建をどうしようか悩んでいる。住宅のすぐ裏にあった牛舎があったところに亀裂が走っていたので、それを見た父が心配をしてなかなか家族の中でも再建先について決まらない。」とこぼした。


再建をこれからどこにするべきなのか、またご自身にとって安全で安心できるところはどこなのか。なんとなくも先行きを考えつつも揺り戻し、また前を見て、という振り子のように揺れる気持ちを誰もがどこかで抱えているのを垣間見た、研修会だった。(鈴木隆太)


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熊本地震救援ニュース 第88報

熊本地震から1
西原村古閑地区の「いま」

2月下旬、西原村の古閑地区で住民の方々が集まっての会合が仮設住宅の集会所で開かれました。
まもなく1年を迎えようとしている被災地・西原村では、仮設住宅での生活もひと段落し、また自宅に戻られた方々もそれぞれの暮らしがあり、またみなし仮設や親類の方を頼っての生活をされている方など、それぞれがそれぞれ今与えられている環境での「くらし」が一定になりつつある中、むしろ「停滞感」を感じている方も少なくないようです。

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そんな中、古閑地区の方とお話する機会がありました。
「今はなんか落ち着いたというか、それぞれがそれぞれになってしまってバラバラ。誰がどうしようと(家の再建など)しているのか全く分からなくなった。」
地域から離れての仮設などでの暮らしをしている方、かろうじて残った家に戻っての暮らしを始めている方、それぞれがそれぞれの環境下にあって、なかなか集まる機会を作ることも難しいとおっしゃいます。

だからこそ、今一度集まってそれぞれがどう考えていらっしゃるのか、そのことを確認しようということで、冒頭の仮設での会議となりました。

今はまだどこをどう修復するのか、また住宅は元の宅地に建てられるのか、あるいはどこか別の場所に建てることになるのか、まだまだ不確定な部分はありますが、そうした中でもそれぞれのご家庭でどのような再建をされるのか、そしてその集合体としての集落のこれからはどうなっていくのか、この地域におけるそれぞれの「納得」をしながらの合意形成を図っていかなければならない、そうしたことを確認する場となりました。

昨年6月の梅雨。地震による大きな被害を受けた西原村では大雨による二次災害が各地で発生しました。そして3月。またも6月を目前とする時期に差し掛かる中、雨による再び起こるかもしれない被害への警戒が村内ではあちらこちらで声として聞こえてきます。
様々な要因でなかなか前に進めない今、焦燥感と疲労が見え隠れします。中には地域での話し合いが行われないまま、これからどうなるのか先行きが全くつかめない人も。

4月。一軒ずつのヒアリングが始まりました。これから住宅再建をどうしていくのか。それは「これからどの地でどのように生きていくのか」という問いに他ならなく、またそこから聞こえてくる声はまだまだ悩みの真っ只中にある、そうした心象風景が垣間見えます。
「戻りたくても、今のところは雨が降った時に不安だから」
「俺の思うところはあるけれど、それはまた親父とは違う考えだと思う」
「公営住宅に入ろうと思う。元の地域にできるなら、それがいいけれど、それも難しいのではないか」
こうした声を聞きながら、これからの地域についてそれぞれが思いを馳せておられます。

そんな中、こんな言葉も聞かれました。
「一人でも多く、この地に戻ってきてくれたら。」

今まであった地域のつながりの中で生きてきた方々だからこそ、今一度、という気持ちが強くにじみ出る方も決して少なくありません。

1年を目の前にして、あらためて今までを振り返り、これからを見据える。そうした「踊り場」に今、被災地があることを感じます。そしてこれからのここ西原村の復興を目指して、やはり一人ひとりと向き合いながら、なお、地域での合意形成を図る、そんな一助ができればと願ってやみません。(鈴木隆太)

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