熊本地震救援ニュース 第96報

 熊本地震では、関連死が直接死の4倍越えで、仮設住宅での孤独死はこの3年間で28人になってしまいました。熊本日日新聞(2019/04/16)では「内訳は、自治体が借り上げて提供するみなし仮設住宅が最多の22人、建設型仮設が4人、市営住宅などが2人となっている」と伝えています。圧倒的にみなし仮設が多いという状況です。このことは、住み慣れたところを離れ、人の繋がりもなく、ボランティアも関りにくいということから孤立していることが伺えます。

仮設住宅の様子

 仮設にお住いの被災者の方を訪ねると、お母さんが地震後体調を崩されたそうです。デイサービスや病院に通う毎日で、送迎をするお父さんもどことなく疲れている様子です。そして、仮設の集約に伴う引っ越しもあり「大変だ。仮設で荷物もないと言っても、なんだかんだあるからね~。ぼちぼちやらなしようがない。誰か手伝ってくれればありがたいけどね」と。。。引っ越しは、梱包して、荷をといて、とても大変な作業です。特にお年寄りにとっては、負担が大きいです。

 そして、新たに建築する家の土地を見に連れていってくれました。そこはもともと畑だったようで草が生い茂り、まだ整地さえ始まっていませんでした。それでもうれしそうに「ここに家が建つんだよ。たぶん来年くらいには建てられるかな」と話してくれました。

 また、別の家族を訪ねると、「家族が多いから引っ越しも大変、仮設は収納もないしね。」とうなだれていました。「擁壁もできないから、家も建てられない。いつまでかかるかわからないんだよね。実は家を建てたのが、昭和48年の4月16日で、地震で家が壊れたのが平成28年の4月16日で同じ日なのよ。これってどう思う??」と打ち明けてくれました。同じ日に家を新築して、同じ日に家が倒壊したなんて酷いことを神様はしたのでしょうか・・・。ぶつけどころのない怒りがこみあげてきます。

 仮設では、高校生のボランティアと一緒に花植えをしている住民さんがいました。地震後、家の解体に伴い、家財を搬出した方でした。お元気そうで何よりです。毎日花壇の水やりをしているそうで、新たなお花もせっせと植えていました。ちょっとした交流が被災者を元気にしてくれます。

(増島智子)

熊本地震第救援ニュース第95報

熊本地震から3年が経ちました。昔は「災害は忘れた頃にやってくる」といいますが、昨年のように災害が相次ぐと、熊本のことも忘れられ、話題が少なくなっています。しかし、現実はいまだ仮設住宅などの避難生活を余儀なくされ、擁壁などの工事が始まりつつある一方で、手付かずの状態のままのところもあります。以下に、あれからの3年の被災
地をレポートします。


被災地では、現在、建設型仮設とみなし仮設住宅などの避難生活をしている人は、1万6519人います。長期化する避難生活の中で、西原村では今年の夏には仮設の集約が始まります。仮設の空き家が目立ってきていますが、コミュニティがバラバラになったり、引っ越しへの不安も隠せません。阪神・淡路大震災でも経験していますが、もう一度コミュニティを作るのは一苦労なのです。このように仮設の引っ越しは想像以上に負担が大きく、これまでの被災地で体調を崩した人を何度も見てきました。被災地でいつも繰り返されるこの光景に何とかならないものかと頭を抱え込みたくります。

久しぶりに訪ねたお宅では、家族総出で唐芋(さつまいも)の選別や植えつけのための苗の切り取る作業をしていました。いよいよ植えつけの準備です。思い起こせば、3年前の4月に地震が発生し、その片付けに追われる最中に、唐芋の植えつけの時期にぶつかりました。家の片付けももちろんしなくてはならないのですが、唐芋農家にとっては、この時期に苗を植えないと一年間の収入が途絶えてしまい、暮らしの再建にはいもの苗を植えることが欠かせない大切なことでした。そこで、西原村では西原村農業復興ボランティアセンター(西原村百笑応援団)が立ち上がり、農業に特化したボランティア活動が行われました。また、生きがいとしての農作業を支えることは何より被災者の励みとなりました。(*ボランティアセンターでは、原則農業などの生業支援はしていません。それは農家の利益につながるということでしていないのです。)
中には、今回の地震で農家をあきらめかけようとしていた人もボランティアのお陰で、農業をもう一度やり直そうとした人も少なくありません。

他の被災地では生活再建イコール家の片付けということで、畑や事業主さんの片付けは後回しか、手付かずに追いやられてしまうケースがほとんどですが、西原村ではそのタブーを打ち破り農業支援のボランティアセンターができたことはとても画期的なことでした。これで被災者も生きる糧となる農業をしながら家の再建にも力を注ぐことができるのです。

今年もこうして、唐芋の苗を植えている様子に立ち会えることができてうれしかったです。(増島智子)