熊本地震救援ニュース 第56報

<災害時におけるボランティア事情-36>
 熊本地震の被災地に、梅雨前線が停滞し記録的な豪雨をもたらし、被害を拡大させています。現地からのレポートを送ります。

<6月21日現場レポート>
 熊本地震から2ヶ月が過ぎ少し落ち着きを取り取り戻そうとしている中、被災者の心を打ち砕くかのような豪雨により、熊本県では観測史上4番目となる1時間150ミリの雨量を観測し、土砂崩れなどに巻き込まれ6人の尊いいのちが奪われました。いつもお世話になっている高野山関係の宇城市の寺院でも床上浸水の被害が出たという報告をお聞きしました。

西原村では、地震で緩んだところに大量の雨水が染み込み、至る所で土砂崩れが発生し、朝から雨も小康状態となり、ボランティアも住民さんと協力しながら、ブルーシートをかぶせたり、土嚢づくりをしたり、道を塞いだ土砂をかき分けたりと、一日中動き回りました。被災者の方からは「また振り出しだ」という落胆の声が聞こえてきました。この熊本地震の直後に出産したお母さんは、3人の小さな子どもを持ち、その大雨の日は石垣が崩れるギシギシする音を聞きながら不安な夜を過ごしたそうです。新築の自宅も地震による倒壊をまぬかれたものの、隣のお宅の石垣に地震により亀裂が入り、そこへ今回の大雨により土砂崩れが発生したのです。
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崩壊の危険から守る擁壁にかぶせていたブルーシートが、強風に煽られ土嚢袋が切れてしまったその補修に追われるなど、先週に引き続き「UP GARAGE」の社員さんは着いて早々、大活躍でした。
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そして、唯一水が戻ってきた田んぼでは、田植えを終えたばかりでした。そこへこの大雨により、土砂が流入したり、あぜに亀裂が入り、水が流出したりして、被災者が前に歩み出そうとする心を無情にも打ち砕きました。
田んぼ1_s
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今朝も雨が降り出していますが、これ以上被害が広がらないことを祈るばかりです。他の地域のみなさまもくれぐれもお気をつけください。

熊本地震救援ニュース 第55報

<災害時におけるボランティア事情-35>

◎6月13日の現地レポート
 ニュース第53報でもお伝えしたように、被災地での仮設の建設が遅れる中、西原村では木造仮設住宅30戸が15日に完成予定です。西原村では、木造50戸、プレハブ252戸が7月7日までに順次完成予定で、最初の入居は19日頃から始まる予定です。木造仮設では県産材を使って、プライバシー確保のため隣室の音が聞こえにくい壁を採用しているそうです。
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 そういう中で、被災家屋の片付けがボランティアの手により進んでいます。屋根の瓦を落としたり、家の中の片付け、倒れかけたブロック塀の撤去や荷物の移動などです。家屋の中は、地震の力の強さをまざまざとみせつけるように、多くの家財道具が転倒し、その倒れたタンスなどから奇跡的にいのちをとりとめたような状況が広がっています。そのお宅は、足湯をしているときに、「家の片付けは何もできとらん」ということを聞いて、1ヶ月以上経ってからの片付けでした。中は家屋の倒壊により、雨漏りがひどく、家財道具のほとんどにカビが生えたり、水によりタンスは膨張し開かないような状態でした。被災者の方は「情けない・・・」と憔悴しきった様子です。
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 また、瓦を落とすのは、倒壊の危険性を軽減するためと雨漏りを防ぐためで、瓦を剥ぎブルーシートをかぶせるのです。これは技術を要するので、屋根にあがるのは専門家ボランティアの仕事で、落とした瓦を拾うのは一般ボランティアで、お互いに連携しながら現場では作業が進められています。
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 被災者の方は、片付けが終わると「これで安心じゃ、ゆっくり眠れる」と言ってくれます。あるおばあちゃんは「これから這い上がっていくしかない」ともおしゃっています。

 またボランティアのみなさんも北は北海道、南は沖縄まで各地から被災地に駆けつけています。今回私たちと一緒に活動したのは、関東から来てくれた全国展開する「UP GARAGE」という企業のみなさんです。西原名産の唐芋農家さんでは、出荷に向けて倒壊した貯蔵庫の中から、芋を運び洗浄機にかけるお仕事を手伝いました。貯蔵庫の倒壊により、芋が傷つき値段が下がるそうですが、出荷ができるということは、丹精込めたものを出す喜びになります。にわかに活気づき、ばあちゃん、じいちゃんの顔にも笑顔がこぼれます。「元気出た!」「こんなのみたことないじゃろ」と大喜びです。
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~足湯のつぶやき~
仮設住宅に入ってから、先のことを考えなん。たぶんあそこ(以前住んでいた場所)は住めんど。

~ボランティアの一コマ
資材を管理しているボランティは、現場に持っていく資器材の管理をしています。みなさんが現場でスムーズに活動できるように、ボランティアセンターにはたくさんの資器材があります。足りないものがあれば調達し、道具を大切に管理しています。表舞台とは違いますが、縁の下の力持ちで、なくてはならないお仕事です。陰から被災者のみなさんを支えてくれています。

◎おかげさまで、ボランティア・バス佐賀便第1号は、ほぼ満席になりました。ご協力ありがとうございました。感謝!!
◎長崎便(6月25日発)はまだ空席があります。長崎担当 草野紀視子さんまでメールで申し込みください。草野紀視子 yu_kikijp@yahoo.co.jp まで。

熊本地震救援ニュース 第54報

<災害時におけるボランティア事情-34>
 この熊本地震救援ニュースでも何度も紹介させて頂いている「わかばちゃん」(西原村・神戸大学生)の活動を久しぶりに紹介します。
わかばちゃんを中心に、西原村再建に向けていろいろな関係者が集まり、「わかばmeeting
」を続けながら、「どぎゃん、すっとか?」(どうるか?)とあ~でもない、こ~でもないと議論を重ねています。その場を「炊き出しマルシェ・わかばmeeting」と関係者は親しんでいます。以下、現地レポートです。

 6月12日(日)に西原村災害ボランティアセンターにて、わかばmeeting主催の「炊き出しマルシェ」が行なわれました。炊き出しマルシェは、住民の方々を主役にした炊き出しイベントで、村民の方々が各々作ってきてくださった郷土料理などを住民さんとボランティアさんとが交流しながら食するという会となりました。「助けてもらうだけでなくて自分たちも何か役に立ちたい!」という住民さんの声がもとになり、この企画が行われました。また、お昼間には無料食器市第2弾も行いました。
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 総勢100名ほどの住民さんが集まり、ワイワイガヤガヤと良い雰囲気で交流が深まりました。住民さんの中には、「初めてボランティアセンターに来た」という方もおられ、久しぶりに再会した住民さん同士で話に花がさく方もたくさんいらっしゃいました。ボランティアの方々も人数は少なかったですが、一緒に食事をすることで住民さんとも交流することができたようです。
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「村から市内に引っ越す人もいるし、みんな避難していて会えないことが多いので、こうして集まれると嬉しい」という声や、「食器が何もかも割れてしまったから食器市はとても嬉しい。ボランティアさんが来てくれるから助かるわ」という声などもありました。
 今後もこうして「わかばmeeting」を通して、交流の場づくりをしていく予定です。

※わかばmeetingとは?
西原村の復興支援を行う有志のグループです。神戸大学出身で休学中の寺本わかばさんを中心に、村内の住民の方々や支援者が集まり何かできることはないかと議論しています。被災地NGO恊働センターもわかばmeetingを支援しています。また復興に向けての村のさまざまな様子を、村民に伝えるために「週間 DOGYAN」(16・06・07 vol 1)を発行しました。活動の柱は次の5つです。
1.楽しい復興を目指す
2.西原村の「村民」が自発的に動きだす環境づくり
3.西原村から震災を機に出て行かざるを得なかった人が戻って来る仕掛けづくり
4.西原村に元々住んでいる方々と新しく移住してきている人たちのつながりづくり
5.西原村に来たボランティアさんを西原村のファンにしていく

熊本地震救援ニュース 第53報

<災害時におけるボランティア事情-33>
 熊本地震から2ヶ月が経ちましたが避難所にはいまだなお6400人の方が避難生活を強いられています。
熊本日日新聞は「県が整備中の応急仮設住宅は65団地2951戸のうち、完成したのは5団地232戸(13日現在)にとどまる。約6400人は避難所生活を続けており、生活再建に不安を抱えたままだ」(2016/6/14熊本日日新聞)と報道。

<6月12日現地レポート>
 今日は避難所での足湯活動を行いました。今回はなんと菊池市の地域おこし協力隊の「きくちのもん」のみなさんのご協力で、菊池で有名な温泉の湯を使い、足湯を行いました。温泉をポリタンクに入れて車で西原村まで運んでくれました。菊池温泉のお湯はぬるぬるすべすべで、効能がとてもよく、西原村の人たちも「菊池温泉のお湯はいいね~」と誰もが話してくれています。
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足をいれると、いつも以上に効果があるのがわかります。徐々に背中のほうからポカポカし始め、汗がじわーっとにじみ出てきます。みんな足の裏までのすべすべです。冷え性のお母さんは、あっと言う間に赤らんできて、自然と笑顔がこぼれます。
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きくちのもん_s

 そして、今日は足湯以外にも地元西原村の整体のボランティアの方とその友人の南阿蘇のお仲間や、八代から来られた釜炒りの貴重なお茶を提供してくれるボランティアのみなさんと菊池温泉を提供してくれた「きくちのもん」とのコラボで、本当にフルコースのような、心も身体も芯からリラックスできる一日になり、厳しい避難生活の中で一時の潤いを与えてくれました。
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~足湯のつぶやき~
若い人にこんなことしてもらってうれしいよ。住んでいるとこがすべて壊れてしまった。今度くじを引いて当たれば家に住める。でも近くの人たちと別れる(離れる)のはつらいね。気持ちよかったよ。本当にありがとうね。
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~ボランティアの一コマ~
ボランティアセンターのトイレは仮設トイレです。トイレを毎日ボランティアが掃除をしてくれます。掃除をしないと臭いがきつくなるからです。EM菌がいいよと勧められ、EM菌を入れたそうですが、酸がきつくてかなり臭いがしてきたそうです。思い出すに阪神・淡路大震災直後、神戸市兵庫区内の須佐野公園にボランティアのベースキャンプをおいて活動していた私たちですが、その敷地に「被災地障害者センター」さんが同居していました。その公園に仮設トイレが6基ほど設置してくれていたのですが、あの時もEM菌で処置をされていたのですが、その仮設トイレを毎日黙々と掃除をしてくださっていたのが、被災地障害者センターの当時事務局長をされていた故大賀重太郎さんでした。また、佐賀からボランティアに来られていた僧侶も滞在中毎日トイレ掃除をされていたことを思い出します。
ほんとにボランティアに感謝です。              (増島智子)

熊本地震救援ニュース 第51報

<災害時におけるボランティア事情-31>

<ボランティア・バス 佐賀便、長崎便 決定!!>
 これまでに何度か予告しましたが、ボランティア・バスの佐賀便(6月26日)、長崎便(6月25日)が下記のように決まりました。これを読まれたみなさまに、是非友人、知人で佐賀、長崎方面の方に住んでおられる方に拡散してくだされば助かります。

 ●長崎便  6月25日(土)JR長崎駅横・大村ボート発着所前集合(最寄り駅:長崎駅)午前6時出発、(帰路)JR長崎駅 19時半~20時頃着(運行 雲仙観光) 
◎申し込みは、メールで草野紀視子 E-mail yu_kikijp@yahoo.co.jp
もしくは被災地NGO恊働センター 村井雅清まで(090-3160-3816)

 ●佐賀便  6月26日(日)JR佐賀駅バスセンター8番乗り場 集合(最寄り駅:佐賀駅)午前7時出発 (帰路)JR佐賀駅 19時頃着(運行 ロイヤル観光バス)
◎申し込みは、武久真大 080-5248-5523(小倉在住)
もしくは村井雅清まで(090-3160-3816)

 -活動先は、どちらも熊本県阿蘇郡西原村です。すでに梅雨入りしましたが、雨が降らないことを祈ります。

<初心者 大歓迎!!> 
今までに災害ボランティアの経験がなく、「自分一人くらいが行っても役に立つだろうか?」など、とにかくボランティアすることに不安な方が多いかと思います。だからこそ、同じようなお仲間と一緒にバスで行って、活動して帰ってくるというスタイルは安心です。是非気軽にボランティアにチャレンジしてみてください。

◎GW後、ボランティア・バス企画を発表してから、実に多くの方に賛同を頂き、ご寄付を頂戴しました。皆様のおかげでこうしてバスが出せることに心から感謝を致します。夏休みにまで頑張りたいと思いますので、引き続きご支援をお願い致します。

◎お手数ですが、ご寄付は下記の郵便振替口座で、「通信欄」に「ボラ・バス」とご記入ください。
 郵便振替 口座番号:01180-6-68556/加入者名:被災地NGO恊働センター
銀行から振り込む時は
 ゆうちょ銀行 支店番号:一一九(イチイチキユウ)店/店番:119/当座0068556/受取人名:ヒサイチNGOキヨウドウセンター

熊本地震救援ニュース 第50報

<災害時におけるボランティア事情-30>

 先日ある勉強会で、参加者の一人が「公的ボランティア」と「一般ボランティア」という表現を使っていたので、災害時になんらかの形でボランティアセンターにつながって活動する人たちは、自らを「公的」という意識をしているわけではなくても、行政や社会福祉協議会に認知を受けて運営しているボランティアセンターに登録して活動するという意味で「公的」と云われる由縁であろうかと考えた。では、公的でない「一般ボランティア」とはどういうボランティアのことなのか?敢えて、公的と対比して使われたので「非公的」という意味合いだろうと思う。つまり、ボランティアセンターに登録せずに、被災地の中の知人や友人を通して勝手に活動する、あるいは直接被災者から要望を聞いて活動するというボランティアのことを「一般(非公的)ボランティア」というとすると、この非公的ボランティアは被災者の役に立っていないだろうか?という疑問がわく。

  阪神・淡路大震災の時、神戸市内にはボランティアセンターは二つしかなかったので、7割近く占めていた初心者ボランティア(=ほとんど非公的ボランティア)は、支援の届かない人や地域に対して寄り添い、活動をしていた。つまり支援の届かない「隙間」にこだわったともいえる。ということは、あまねく平等を原則とする行政の隙間、あるいは「公的災害ボランティアセンター」が見落とすような隙間から聞こえてくる被災者(被災地)の声は、場合によっては見落としてはならない声ではないかと断言できる。東日本大震災でも課題となり、改正災害対策基本法にもつながった「甚大な被災地だからこそ、そこからは声が上げられない。また上げても声が届かない。」という深刻な課題に対して、むしろ柔軟で、自由の効くボランティアの方は寄り添いが可能かも知れない。

  冒頭の勉強会に参加しておられた名古屋のボランティアは、「応急危険度判定で赤紙(危険)、黄紙(要注意)の被災者の要望に応じようとするならば、実質ボランティアセンターに登録せずに活動しなければできない。もちろん自己責任で活動をしていますが、ボランティアセンターを通すと赤紙、黄紙の被災家屋には入れないから。」と言っていた。こういう活動の場合は確かにボランティアセンターでは二次災害の心配があるため、引き受けられないというのが現実である。

 熊本地震発生からまもなく2ヶ月になるが、本格的修理の目処がたたず、雨漏り防止のブルーシートを掛けている被災者は多い。被災者からは本格的な梅雨入りになることから、「そろそろシートの張り替え」と心配する声も出ている。しかし、ボランティアは屋根の上には上がれない。こうして危険家屋での瓦礫片付けや屋根へのシートがけなど、「公的ボランティア支援センター」からはボランティア派遣はできないケースが多いだろう。こういう場合、大工さんや建築士さんがついて行えばボランティアもできる領域が増えるのは間違いない。今回の熊本地震では、被害家屋の多いことからまず「住まい」再建や補修に関連する作業が多い。今後のためにも公的ボランティア、あるいは一般ボランティア問わず、専門家との連携で被災者のお役にたてるような仕組みづくりが急がれる。
                                                                               (村井雅清)

*引き続き、ご支援をお願い致します。
「熊本地震」活動支援金を募集しています。
 郵便振替 口座番号:01180-6-68556/加入者名:被災地NGO恊働センター
 *お手数ですが、通信欄に「熊本地震」と明記下さい。
銀行から振り込む場合は、
 ゆうちょ銀行 支店番号:一一九(イチイチキユウ)店/店番:119/当座0068556/受取人名:ヒサイチNGOキヨウドウセンター

(なお、「熊本地震」支援活動の一部は、公益社団法人Civic Forceからのご支援を戴いてパートナー事業として展開しております。)

熊本地震救援ニュース 第49報

<災害時におけるボランティア事情-29>
 先日、「44人屋根から転落」「熊本地震 修理依頼も「1年待ち」」(毎日新聞、2016・6・7)という記事が目に入った。記事によると「熊本地震で被災した自宅の修理中に、屋根などから転落する事故が相次いでいる。需要が急増し、業者に修理を依頼しても「1年待ち」の状態。住民が自ら作業するケースが増えており、被害に拡大が懸念される。」
また「シートで雨漏りを防いでいるが「風雨ではがれるたびに夫が屋根に上り、直している。けがをしないか心配だ」(同紙)という内容。

 今回の熊本地震後の被災者の話で共通するのは、最初の震度7ではまだ建物はかろうじて倒れていなかった。しかし、2度目の震度7で「グシャ!」と壊れたという話です。
 私は連休中に少し高台から被災家屋の状況を見たときに、とにかくブルーシートが目につき、「これから雨が降ると大変なことになるだろうなぁ・・・」と心配した。そもそも危険が伴うので、ボランティアに依頼できないために圧倒的に人手が足りないことは容易に想像がついた。しかも、もっと気になったのは、ブルーシートがかかっていない家屋は被害がないからシートがかかっていないのではなく、屋根の上にあがってシートがけができる人がいないからだろう。例えば高齢者のみの家屋は被害があってもかけられない。そういう被害家屋は、この間約2ヶ月の間雨が降ったときには容赦なく雨漏りがしたのだ。

 私の友人の場合は、シートをかけているものの、対処が遅かったのか約1ヵ月半で和室の天井はカビだらけ、畳にはきのこが生えていたというウソのような話。これでは、例え建物本体の損傷が軽微でも実際にはこのままで生活はできない。この知人は、「全壊」認定なのでとりあえずは仮設住宅での生活ができるが、もし被害認定が「一部損壊」であっても天井や壁がカビだらけ、畳の下の土台は腐りはじめたという場合であればどうなるのだろうかと心配する。しかも雨漏りにより水が浸透し、半年ほどしてから「壁が落ちる」とか、「カビだらけで健康上住めない」とか、「柱はシロアリの巣になってしまい危険度が増す」とか、とにかく被害判定とは関係なく、「人が人らしく、最低限の生活ができる状態でなくなるだろう」ということが予測され、深刻な課題である。もう遅いのかもしれないが、だからこそ今、しかるべき手が打てないのかと考えたくなる。

 この救援ニュース第43号、47号で紹介した専門家による「大工ボランティア」と「一般ボランティア」がセットになれば、ブルーシートがけの張り替えをし、一応雨漏りを防ぐ程度の処置はできるだろう。冒頭の新聞記事に戻ると、屋根の修理を依頼しても「1年待ち」ということはまだ向こう1年は雨漏りを防げないということなのか?これでは被災者は踏んだり蹴ったりだ。せめて素人のボランティアに簡易の講習を受けてもらい、専門家をつけて屋根のシートがけをきちんと対応するというしくみを制度化できないものかと節に訴えたい。
                (村井雅清)

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熊本地震救援ニュース 第48報

<災害時におけるボランティア事情-28>
 今、朝日新聞に毎日「てんでんこ 熊本避難ルポ」という特集記事が出ています。熊本地震後の被災地における避難の状況を伝えています。昨日、今日は熊本市内のある小学校避難所のルポです。学校側としても、これまでも避難所訓練はされてきたようです。しかし、いざ現実になると予想以上の困難が待ち受けています。困難にぶつかった学校関係者が訓練を振りかって「実践的でない『イベント』だったなあ」と言っておられます。しかし、そうした中でも校長先生以下、教員たちが力をあわせて運営にあたり、なんとか難局を乗り越えられたようです。最初は、校長の方針に疑問を感じる教員もいたようですが、一人の教員が「みんなでやりましょう!」という発言をされ、一応前に進みだしたとのことです。
 この事例から私たちが学ばなければならないことは、いわゆる訓練のための訓練になってはいけないということです。いかに実践的な訓練をしておかなければならないかということにつきます。しかし、今回の場合は二度も震度7の揺れが襲うということは予想外と言えるでしょう。もう一つは、運営にあたって一応みんなで合意形成を図るということが大事です。学校避難所の場合、施設の管理責任者は校長か、教育委員会になるケースが多いですが、運営に関しては地域の住民リーダーを中心にと明記されている地域防災計画が少なくありません。この学校もそのようになっていたのですが、「マニュアルでは、緊急の場合は地域リーダーとして避難所を開設するはずの地元自治会役員が姿を見せなかった」ということらしい。いくらマニュアルでそうなっていても、ご自分の家が被害にあっていると、やはりそちらを優先するでしょう。これは想定内です。

 ところで実践に役に立つ訓練と言っても、実際にはなかなか判らないことが多すぎるだろうと思われます。最も役立つのは、平時から他の地域(場合によっは他県)の災害時にボランティアに行って実際に見ておくことが必須だと思います。机上の訓練では限界があるでしょう。そこで、名古屋市天白区の取り組みを紹介しておきます。是非参考にしてください。私が避難所運営ワークショップの講師として数年続きで関わっていた名古屋市天白区は地域の住民リーダが避難所責任者となり、その方に地区の代表者や区行政がサポートすることになっており、この10年間くらい毎年、この住民リーダーを育てるための研修をしてこられました。目的は、誰がリーダーになってもできるようにということです。1学区から毎年3名の研修生が来られます。つまり10年間で30名のリーダー資格者が生まれるということです。これくらい徹底していると、誰がリーダーになってもなんとかやっていけるでしょう。おそらく、ここまでやっているのは全国でもこの天白区くらいではないでしょうか?行政や社会福祉協議会、地域のNPOも積極的に応援しています。
 地域の中からこれだけの担い手が生まれると合意形成も難しくないだろうと想像できます。それはお互いが、避難所運営リーダーになれば大変だろうなぁと分かっているからです。合意形成をスムーズに持っていくには、徹底して話し合うことです。時間がなければ、「とりあえずこうしましょう!上手くいかなければ元に戻ってまた話し合えばいい!」というくらいに構えていれば、できるものです。日本の場合、物事を単純に多数決で決めてきたので、時間をかけての合意形成には馴れていません。でも、やってみれば案外簡単にできるものです。是非一度平時において、実験して見てください。(村井雅清)

*出し惜しみをする訳ではないのですが、長崎便・佐賀便のボランティア・バスのご案内は、あと一両日待ってください!!

*引き続き、ご支援をお願い致します。
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熊本地震救援ニュース 第47報

<災害時におけるボランティア事情-27>

●<現場スタッフにより6月3日レポートです。>
 第43報でもお伝えした救出作戦の結果です。納屋は跡形もなくなりましたが、トラクターは無事に救出されました。これも炎天下のなか、地道に活動をしてくれた“棟梁”を初めボランティアのみなさんのお陰です。被災者の方もとても喜んでおられました。
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 また、崩れかけた納屋を復旧する作業も行っていました。被害家屋をすべて解体するのではなく、復旧できるものは復旧していくというのは被災者の方にとっても経済的負担も軽減され、時間をおいてゆっくり考えることができるので、とてもありがたいことです。
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そして赤紙の判定をもらったところの被災家屋に入りました。これは避難所で足湯をしている時に、「うちはもう赤紙じゃから入れん。仏壇だけは息子と出したけど、地震からあとは何もしとらせん。どうしようもなか」というつぶやきがきっかけです。
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そこで、稲見さん(震災建築被災度区分判定・復旧技術者)に現場を見てもらったところ、「これまでの余震で倒壊していないし、補強をすればボランティアさんも片付けに入れる」という判断をしてもらいました。いざという時の避難路も確保しながらボランティアが安全に作業し、被災者の想いに寄り添いながら、連日の活動が続きます。その言葉を聞いた被災者の方は「昨日も2~3時間しか寝てないけれど、これで先が見えてきた。ボランティアさんが神さんに見える」と笑顔がこぼれました。被災者にとっては、あの地震で時間が止まっていたのが、動き出したような瞬間でした。
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 余計なお世話かもしれませんが、こうして専門家がついていれば、ボランティアが手伝うことによって、こんなこともできるという証明です。災害救助法の趣旨に基づけば、「被災地の自治体・首長においては,自ら能動的に,必要な物品を購入し,必要な人材の雇い入れ・協力依頼・従事命令を行い,必要なあらゆる手立てを講じることによって,救助を実施する責務があり,その権限が付与されています。」となり、具体的には災害救助法を徹底活用すれば、全国から建築士を集め、必要な人材として県が雇えば、専門家に工賃も払うことができ、大工さんたちの仕事も創出できるというものです。これだけ災害を繰り返すこの国なのに、どうして行政担当職員は対処しないのか?首を傾げたくなります。
 
すでに被災地は梅雨入りしました。梅雨の晴れ間は、家の片付けや農作業に追われます。一人でも多くのボランティアが西原村などの被災地に訪れてくれることを願っています。

●いよいよボランティア・バス佐賀便、長崎便の準備ができました。GW明けからボラバスの資金をと呼びかけ、たくさんの方々からご支援を頂きました。みなさん、ほんとにありがとうごさいます。「おたがいさま」がこうして生きているんだ!と思うと、感激です。阪神・淡路大震災でも、東日本大震災でもそうでした。こうして「暮らしやすい」「深呼吸のできる」社会が成立するのだと実感しています。感謝!!

●引き続きご支援をお願い致します。
「熊本地震」活動支援金を募集しています。
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(なお、「熊本地震」支援活動の一部は、公益社団法人Civic Forceからのご支援を戴いてパートナー事業として展開しております。)

熊本地震救援ニュース 第46報

<災害時におけるボランティア事情-26>

 前号でもお伝えしましたが、高野山真言宗総本山金剛峯寺社会人権局のご協力で、西原村で僧侶による足湯活動が活発に行われています。21年前の阪神・淡路大震災で初めて避難所で足湯が行われ、その後新潟地震(2004)、能登半島(2007)を初め、以来被災地で続き、東日本大震災や広島土砂災害、茨城県常総市などで足湯が続けられてきました。
 鬼怒川の氾濫で甚大な水害となって茨城県常総市では、被災者自身が足湯を覚え同じ被災者にしてあげるという理想的な光景も生まれました。先日のこの「熊本地震救援ニュース」でも紹介しましたように、西原村の被災地でも、近隣の菊池市の高校生が西原村の被災者のために足湯ボランティアを同高校内でも広げようと取り組んでいます。

前号でも紹介しましたが、「お坊さんに足湯をしてもらうなんてもったいない!」という被災者の声がありますが、お坊さんは別格としても、被災者の誰もが「孫のような学生さんに、こんなことをして貰って」と涙ながらに感謝をされる被災者も少なくありません。
 お水が手に入り、お湯さえ確保できれば足湯ボランティア活動というのは、誰でもできます。そして、心身の疲労が溜まっている被災者にとって「足湯」は、ボランティアからの最高のプレゼントです。足湯はストレスの軽減に相当貢献しているだろうと思われます。

 さて、6月4日、大学コンソーシアムひょうご神戸主催の「学生ボランティア養成プログラム」に講師としてお声がかかり、「KOBE足湯隊」の学生メンバーとともに足湯の研修をして来ました。複数の大学や若干の留学生が参加していました。その中で、ある大学の先生から「なんとすばらしいボランティア活動でしょう!」とお褒めを頂きました。その先生曰く、「これは被災地で被災者にしてあげるのもいいでしょうが、地域で中学生や高校生に普及させて、平時から地域の高齢者施設などでしてあげればどれだけ喜ばれるでしょう!」と感心されたのです。
 全くその通りです。平時から全国の中学、高校、大学、および専門学校などで足湯を覚えておけば、いつでも地域に貢献できます。そして、各々が被災地の地域の近隣に所在していれば、すぐにでも足湯を提供することができます。被災者にとっては、ご自分が住まわれる地域の子どもたちが足湯をしてくれるとなると、どんなに嬉しいことでしょう。

 足湯はこれほど簡単で、かつ想像以上に被災者ケアに役立つのです。

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