奥能登地震2023・5被災者支援活動レポート 4

阪神淡路大震災で倒壊した家屋

今回の奥能登地震支援活動を始めたのは、28年前の阪神・淡路大震災では家屋の損傷が26万棟もあり、死者6434名のうち、その建物の下敷きになって亡くなった方が約8割もいたことから、地震対策は「耐震」ということを何よりも優先しなければならないと痛感したことであることはすでに述べてきました。

全壊修復国が支援・2007年能登半島(朝日新聞2007・10・10)
全壊後の建て直し(2007年能登半島)

一口に「耐震」と言っても、いろいろな技があり、「正解はこれだ!」というものを探すのは難しい。今回、珠洲で行っている活動は、地震で被害を受けた建物を単純に解体して、新築にするのではなく、長谷川順一さん(たてもの修復支援ネットワーク代表)が新潟中越沖地震(2007年)から災害の度に行っている「たてもの修復再建」を思い出し、「地震対策として耐震を広めるには、この方法がベストだ!」と理解したからです。

伝統木造構法の「底力」(朝日新聞より引用)
柱を礎石に載せた石場建ての工法
礎石から落ちたために倒壊を免れた鐘撞堂
伝統構法の特徴・木組み構造

もう一つは、以前当NGO主催の寺子屋勉強会で、「伝統木造構法による建物はそもそも地震に強い(壊れないということではない。)」ということを学んだことに始まります。その時の講師は、私が尊敬する金沢工業大学名誉教授の鈴木 有先生なのです。

 鈴木先生が、阪神・淡路大震災の調査に入った時、被害を受けたが完全に壊れずに、踏ん張っている建物に入ることがあった。その時先生は、「襟を正して、入らせて頂きます。」と表現されたことに感動したからです。この姿勢は長谷川さんが今回の奥能登地震の被害家屋を調査しているときに、「全壊にならずによく頑張ったのですよ!」という表現に共通するものだと思っています。

 鈴木先生は、「(日本の民家の構造は)地域社会のシステムに戻ることを意味する。これは「エコロジー建築」を目指すことになる。エコロジー建築というのは、地球の環境、その建物が建つ地域の環境、そしてそこに住む人、この3つの対象にできるだけ負荷をかけない建築とされています」(注1)と。

 今回の支援活動のポイントは、ただ建物を修復するための相談・説明にとどまらず、そこに住んでいた歴史、暮らし、そして現在の住まい方(コミュニティ再生を含む)を尊重しながら、かつ先代から今に引き継いでいる生活文化を壊さずに、修復するというものなのです。

 鈴木先生は、「そこには、自然と共生する知恵がありました。家族が寄り添う暮らし、地域の人々が助け合う暮らしがありました。」とも日英住文化シンポジウムで語られました。

O邸の歴史を描いた大作
歴史的建造物O邸の外観

今回の相談活動で調査に入った歴史的建造物のO邸では、先代から引き継いだもので、以前珠洲市の一大産業だった能登瓦製造・販売を営んでいました。私たちを案内してくれた息子さんは、今、この邸宅を先代から守り続けてきた父の介護(現在は金沢の病院に入院)をされています。相談会に来るまでは「公費解体」を決めていたのですが、長谷川さんのさまざまなアドバイスによって、公費解体を視野に入れつつも、修復再建も考えようかと迷っておられるようで、その表情は、全壊にならずによく踏ん張ったこの父が遺した建物に、襟を正して向き合おうとしているかのようでもあった。 

*(注1)2002年3月 NPO日本民家再生リサイクル協会作成 日英住文化シンポジウムでの講演よりー長谷川順一さん提供)(顧問 村井雅清)

*なお「奥能登地震2023」の活動は、公益社団法人Civic Forceとのパートナー協働事業として実施します。

■活動支援金のご協力をお願い致します。 
・クレジットカードでも寄付ができます。 
 https://congrant.com/project/ngokobe/605

・郵便振替 
     口座番号:01180-6-68556/加入者名:被災地NGO恊働センター 
・銀行振込 
   ゆうちょ銀行 一一九支店 当座番号 NO.0068556 
 名義:ヒサイチNGOキョウドウセンター 

*お手数ですが、備考欄に「奥能登地震2023」と記入して下さい。


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