「平成30年7月豪雨」災害レポートNO46

一縷の望みをかけた数珠は、残念ながら救出できませんでしたが、ご夫妻は「こんな本格的に、お参りしてもらえるなんて、思ってもみなかったから、本当にありがとうございます!」と。

法要を執り行った猪智喜住職(広島市・高野山真言宗松原山薬師寺)は、「(お母さんが)「自分で勝手にお参りしていたからこんなことになったのかな、とおっしゃてましたが、決してそんなことはないですよ。ずっと、ご自分でちゃんとお参りされていたのは間違いではありません。お参りのしかたに正解とかありませんから。」とおっしゃって下さったときには、安心されたのか涙ぐんでおられました。そして、続けてご住職が「明日は、解体されるのですよね。そんな貴重なときに、こうしてお参りさせていただいて、こちらこそありがとうございます。」と。

お父さんは「もう、明日でこの40年が消える…。解体して、更地になったら、すっきりするんだろうけど、また、そこからが大変なんだろうと思います。」と話しておられました。
とうとうご夫婦にとって、大切な数珠はみつかりませんでしたが、「お参りをしてもらったから、もういいよ。すっきりしたから。」と。それでもお母さんは、諦めながらも、掘り出した土砂をスコップでかき、数珠を探す姿をみたら、ボランティアの人たちも、自分のこととして、最後まで諦めずに泥だらけになりながら土砂をかきだし続けました。

「明日でこの40年が消える」とお父さんが言われたその言葉が、突き刺さるように、とても重たく心に残りました。実は、このお宅は2級建築士であるお父さんが設計し、建てた家なのです。その家にどれほどの歴史が詰まっていたのか、最後の日のなごりおしそうにご夫婦は自宅を眺めておられました。

また忘れられない1ページが、私の記憶に刻まれました。(増島智子)

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