熊本地震救援ニュース 第28報

<災害時におけるボランティア事情-9>
 今朝の神戸新聞朝刊「日曜オピニオン」で、編集委員木村信行さんの「行政万能主義に意義あり」という記事に拍手を送りたい。ことの顛末は以下のようだ。西宮市の今村岳司市長のブログでの発言がきっかけだ。その発言とは、熊本地震発生から4日目の4月17日に市民に宛てたメッセージだ。<あらゆる「支援」は被災地行政機関(他、類する信頼できる団体)ないしは、国県他の行政機関(同)の照会と要請を受けて為されるべきものである>というもの。さらに<急にボランティアで駆けつけて「お手伝いできることはないですか?」と言われても、被災自治体に「その人の対応をする」という仕事を増やしてしまいます> そして、西宮市から物資を送る場合にも触れ、<ありとあらゆる支援には非常時の指揮命令系統が存在します>と続けているそうだ。
木村さんは、「行政万能主義、ここに極まれりの感がある。」とはっきり意義を申している。私は、この木村編集委員の意見に賛同する。

 (21年前のこと)阪神・淡路大震災で、初心者ボランティアがたくさん神戸市役所に押しかけてことから、全く経験のなかった市役所は混乱し、ボランティア受付を直ちに閉鎖した。この一件から、「災害時に初心者ボランティア行くと混乱する」「迷惑をかける」という方程式が成立した。混乱したのは、市役所であって被災地の中は混乱していない。むしろボランティアによって被災者の困難な生活に支援が入り、被災者からは「生きていてよかった!」と涙ながらの言葉もあったほど。木村さんも「阪神・淡路や東北、熊本の被災地で、地震直後に行政の手が足りない隙間をいち早く埋めたのはボランティアたちだ。」(同紙)と指摘している。
 
 昨日のニュースでも紹介したが、2013年の改正対策基本法では、「国および地方自治体は、ボランティアとの連携に努めなければならない。」と書き込まれている。主語は「国および地方自治体」だ。「ボランティアは行政のたりないところを補完をしなければならない」ではないことを、誰もがしっかりと認識すべきである。つまりドイツの自治憲章の根幹となる思想となった「補完性の原理」ということだ。また、災害法制度に詳しい津久井進弁護士は、『大災害と法』というご著書で、「ボランティアは憲法理念を体現している」と解説し、中でも「自己決定権」「個の尊重」が重要だと指摘している。
 私なりの解釈では、「補完性の原理」を具現化しているのが被災地におけるボランティアの働きであり、よって被災地の最前線にいるボランティアの声を受け止め、被災者にどのような支援をすればいいのかを考えるのが、国および自治体の役割なのだ。西宮の今村市長の発言内容は、これとは全く逆の流れをつくろうとしているということである。

 熊本地震で異例の事態となった熊本県や熊本市あるいは町、村の混乱を見ていると、もっとボランティア(専門家ボランティアを含む)にSOSを求めれば、解決することが少なくないことをあらためて認識すべきだろうと思う。
(当NGOが今回西原村で取り組んでいる「災害時における補完性の原理の実践」のような活動が東京FMの下記のアドレスに紹介されています。参考にして下さい。)
http://www.tfm.co.jp/lh/index.php?itemid=109308
http://www.tfm.co.jp/lh/index.php?itemid=109339
http://www.tfm.co.jp/lh/index.php?itemid=109470
http://www.tfm.co.jp/lh/index.php?itemid=109471

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